2012年12月20日木曜日

「住宅ローンが払えない!」と思ったら読む本。

高橋愛子著の同書を1575円支払って購入した。新刊書を滅多に買わない私からすれば奇特な商行為であったのだが、スラスラと読めて、その内容も実際的かつ現実的で、私としては、すこぶる吸い込みが良く、結論から先に言うと充分にペイしたと思っている。金融円滑化法を根拠にした借り換えやリスケは、私自身経験があるし、金融に携わる仕事を30年間(証券マンとして20年、保険屋として10年)続けてきた関係で、顧客にFP的手法でアプローチする機会も多く、この本に書かれてある内容は至極身近なテーマであることを再認識した。
但し、私自身が連帯保証人になったり、ゆとりローンを利用したり、自宅物件が競売にかけられた経験がないので、この辺りのことは興味や関心がありながらあやふやな知識でお茶を濁している領域であったし、任意売却に至っては、その文言さえ知らなかったぐらいだから、その実務の流れや詳細を平易に解説している本書が稀有な良書であるという事実に異論を挟む余地はない。
同書の第1章から4章までは、巷で現実に起こっている実例を、山手線の駅名を仮名とした人物(例えば田端さんとか五反田さん)にご登場願い、その人自身やその人の周辺に起こったファクトを判り易く説明することに成功している。勿論、この部分をノンフィクションとして捉えても面白く読める。
そして、まったりと愉しみながら121ページまで読み進んだところで、読者は第5章の「任意売却という方法をご存知ですか?」に入り込み、予め想定された落しどころに、まとめて収斂されてしまう。痛快だ。
任意売却は競売に対抗する手段であること、競売のデメリット、それに対する任意売却のメリット、詳細は本書に譲るとして、残債が残った場合に債務者が競売よりも返済していく金額が少なくて済むこと、主体性を持った生活のやり直しが可能なこと、競売と較べた場合のコストのロスが省けること、手続きが比較的迅速に運ぶこと等々がシンプルにまとめられている。
そこに一貫して流れるコンセプトは法的というよりは寧ろ、人として血の通った著者自身の愛なのではないかと思っている。奈落の底から人を救出するためのロープの役割を果たすツールが、彼女にとっては任意売却ということなのだろう。
適正な価格を設定するための不動産査定→窓口一本化のための仲介媒介契約の締結→債権者その他の配分調整→売り出し→不動産売買契約→決済と抵当権の抹消。これらのプロセスを踏んで任意売却は進捗していき、結果として競売や自己破産から債務者を救うことを可能にする。税金等の差押え登記の入ったケースを除いて、この方法は極めて有効で、レアケースかもしれないが、当該物件にその後も家賃を支払って住み続けることや、住宅ローン特則付きの個人再生など債務者の選択肢も広がるのではないだろうか…。
ともあれ、税務署や役所、金融機関との個別交渉を密に行うことで、次善の策や猶予をこちらが提示し、その条件を相手方に呑んでもらうことは交渉の基本中の基本であるものの、大部分の一般の方々がそれらのスキルをお持ちでないというのが本当のところだろう。そういった場合、高橋さんのような優良な業者に相談することがベストに限りなく近い、ベターな選択であることは衆目の一致するところだ。
最後に任意売却の2つのリスクというかデメリットを記す。1つは債務者がブラックになってしまうこと。もう1つは残債が残ってしまうことだという。前者は債務者が高齢の場合、その後の人生に殆んど影響がなく、日常生活において大きく支障をきたすことは少ないだろうと思われ、後者に至っては最悪の状態から抜け出せることを考慮に入れれば格段の環境の改善が見込まれるので、このことは寧ろ喜んでいいのではないかと私は考えるのだが、どうだろうか?
私事で恐縮だが、先日、成功した友人のご好意に甘えて、銀座の老舗クラブで飲んだ。失礼を承知で私の思いつきを披露すると、同店の一流ホステスさんと著者の高橋愛子さんのルックスが私にはカブって見えてしょうがないのだ。
それほどに好感度の高い彼女の写真付きの帯びを纏った本書が、好評を博すことは想像に難くない。勝間和代のそれは、即、ゴミ箱行きになるのが自然な流れであるが、私は高橋女史のこの本を現状のまま書斎に安置することに決めている。そして、時々は目を通してみようと思う。
なぜならば、1度や2度の読後感では得られかったこの本の重厚さと、私の稚拙さに起因して、その行間から読み取れなかった「愛」を再発見することになるだろうから…。



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